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建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第2回-11月20日付-

『評価指標・ウェートを大幅変更』 ~中小企業でも「規模の質」問われる~

今回の大改正の影響を把握するため、現行制度の「現経審」と改正後の「新経審」の全体像を俯瞰(ふかん)してみましょう。現経審では (1) 完成工事高を評価するX1評点 (2) 完成工事高当たりの自己資本額、建設業従事職員数を評価するX2評点 (3) 経営状況分析によるY評点 (4) 技術職員の資格数を評価するZ評点 (5) その他社会性等を評価するW評点 ― の5評点を加算して、総合評定値Pを算出します。
一方、新経審では5評点が次の通り変更になります。まずX1評点のウェートが35%から25%に引下げられます。 X2評点は、評価項目を自己資本額とEBITDA(利払前税引前償却前利益額) に変更します。
Y評点は、従来の収益性、流動性、安定性、健全性という4要素12指標から、新たに「負債抵抗力指標」 「収益性・効率性指標」「財務健全指標」「絶対的力量指標」を各2指標、合計8指標による評価に変更します。
Z評点は、従来の技術職員の資格数の評価に、新たに元請完成工事高の評価を追加し、ウェートを25%に拡大。W評点は、銃ラインの5項目から、工事の安全成績を削除する一方で、労働福祉の状況、建設業の営業年数、防災活動への貢献の状況、法令順守の状況、建設業の経理に関する状況、研究開発の状況の 6項目に評価指標を更新し、あわせて評点幅を約2倍に拡大します(表参照)。
現経審と新経審で、総合評定値(P)に占める5評点の構成比率がどのように変化するかをグラフに示してみました(グラフ参照)。 X2評点、Z評点、W評点の構成比率が拡大し、X1評点の構成比率が縮小するため、完成工事高の評価が半減するように見えます。一方で、新Z評点の約2割は元請完成工事高の評価となります。また、構成比率が約3倍になるX2評点は自己資本額とEBITDAという絶対額の評価です。
こうしたことから、大企業の場合は、完成工事高だけに偏重していた評価から、元請完成工高や利益、内部留保という「規模の質」を問われる評価になりそうです。
一方、中小企業の場合はどうでしょうか。現経審については、経営状況分析のY評点に偏重し、実際の企業の力量が評価されないとの意見もありました。
ところが、このY評点について、新経審では営業キャッシュフローや利益剰余金の絶対額評価が新設されることになります。中小企業にとっても、大企業と同様に「規模の質」が問われることになりそうです。
次回からは評点ごとに改正内容を解説し、適切な経審対策の方法を検討していきます。

経審改正 新旧比較表
経審改正 新旧比較表
  現経審 新経審
  ウェート 最大値 最小値 得点幅 構成比 ウェート 最大値 最小値 得点幅 構成比
X1評点 35% 2,616 580 713 44.7% 25% 2,268 390 469.5 23.7%
X2評点 10% 954 118 84 5.2% 15% 2,280 454 273.9 13.8%
Y評点 20% 1,430 0 286 18.0% 20% 1,595 0 319 16.1%
Z評点 20% 2,402 590 362 22.8% 25% 2,491 210 570.3 28.8%
W評点 15% 987 0 148 9.3% 15% 1,750 0 350 17.6%
総合評定値P 100% 1,925 333 1,593 100.0% 100% 2,030 260 1,983 100.0%


左が現行経審、右が新経審の5評点の構成

注)2008年1月31日の改正発表に合わせて、修正致しました。

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