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建通新聞掲載 2008年「経審改正」の衝撃 第9回-12月13日付-

評点順位が大きく変わる、Y評点

2008年経審改正で、X2評点とともに、Y評点の内容が大幅に変わります。 現行経審が策定された平成10年ごろは、金融ビッグバンのさなかであり、金融機関と建設会社の経営破たんの連鎖が業界を揺るがした時代でした。当時のY評点が700点超だったゼネコンが経営破たんしたことから、現行経審への改正時には、「バブル破たんで抱え込んだ不良資産をあぶり出す」とともに、合わせて「期末の資金繰りを重視した経営状況分析に改正した」と、当時の改正に携わった関係者から聞いたことがあります。

現行経審のY点流動性は、売上債権や未成工事支出金を保有すると評点が低下します。このため完成工事高が増加する一方で、営業債権の未回収が拡大する3月決算期の企業だけが、極端に不利になるという事態が発生しています。

また健全性は、通常の経営状況の企業間では差がつきにくいのですが、固定資産を全く保有しない一部の企業だけ評点が高くなる、という指摘もあります。現行経審のY評点では、売上や総資産など、事業実績を背景にした企業規模は評価されることなく、一方で特定の財政状態の時に高得点になるケースがあるのが実態です。

今回の改正は、このような問題を解消し、企業の規模・力量を適正に評価することで、経営実態を的確に把握できる指標に変更されたといえます。Y評点は、表の通り、現行経審の4要素12指標が、改正経審で4要素8指標に集約されます (参照表)

経営状況分析評点(Y評点)現行経審と2008年改正経審の比較
経営状況分析評点(Y評点)現行経審と2008年改正経審の比較

※営業キャッシュ・フロー=経常利益+減価償却費±引当金増減額-法人税住民税及び事業税±売掛債権増減額±仕入債務増減額±棚卸資産増減額±受入金増減額

現行経審から引き継がれる指標は、実線で示した通り、純支払利息比率、自己資本対固定資産比率、自己資本比率の三つです。また指標をそのまま継承するのではありませんが、傾向が似た要素を引き継ぐものとして、破線で示した通り、収益性・効率性、負債回転期間の2群があります。また、流動性の3指標と健全性の長期固定適合比率、付加価値対固定資産比率の合わせて5指標は廃止されます。

一方、企業の絶対的力量をはかる指標として、営業キャッシュフロー(絶対値)、利益剰余金(絶対値)の2指標が、全く新たな評価指標として導入されました。

注)2008年1月31日の改正発表に合わせて、修正致しました。

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